猫になる薬

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寝たきり老人である祖父は毎日薬を飲む。
その薬の中には猫になる薬も含まれている。この薬のおかげで祖父の介護は楽になった。
年老いた猫は一日中寝ているものだ。祖父も「どうせ寝るのなら猫として寝たい」とよく話していた。
部屋の隅には猫トイレ。そこまで歩く体力はあるらしく、自力で用を足す事が多い。時折、粗相をするも猫のものならば片付けも楽だ。
食事も猫を膝に乗せ、口へと運ぶ。チャオちゅーるみたいな栄養食に祖父もご満悦である。
人の介護と聞くと難しく考え、構えてしまうも猫の介護となると子供の私でも出来るのではないかと思い、積極的にお世話をした。

そんなある日、薬が切れたせいか祖父が人間の姿へと戻ってしまった。
その日の介護は大変だった。でも猫のお世話の経験からかそこまで苦労ではなかった。
「いつも、ありがとうな」
祖父にお礼を言われる。
猫もいいが、こうやってお礼を言われると人もいいなって思う。
SF
公開:22/03/07 20:32

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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