歌を忘れた鳥鳴琴
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物置から発掘したオルゴールを聴こうと、久方ぶりにゼンマイを巻いたが、これがうんともすんとも鳴らない。
長年の間に、中の部品が壊れたか錆びたかしたのだろうが、思い入れのある品で捨てるに忍びない。修理出来ぬものかと箱の蓋を開けると、明るい黄色の羽をした小鳥が一羽、自信なさげに頭を傾げていた。
そう言えば、このオルゴールの曲は『カナリヤ』だ。きっとあまりに構ってやらないものだから、こやつも自分の鳴らし方を忘れてしまったに違いない。
確か、歌詞の終いに戻す方法があったはず。古い記憶を辿りつつ口ずさみ、どうにか歌の通りに支度を整えて、三日月笑う夜の海へ連れて行った。
波に浮かべたオルゴールは月光が引いた道を沖へと漕ぎ出し、小さな影が光に溶ける刹那、ピイと一声鳴いて空へ羽ばたいたのだった。
そうか、ずっと持ち主の所へ帰りたかったのだな。下手な口笛で見送りながら、胸の内の懐かしい面影に手を合わせた。
長年の間に、中の部品が壊れたか錆びたかしたのだろうが、思い入れのある品で捨てるに忍びない。修理出来ぬものかと箱の蓋を開けると、明るい黄色の羽をした小鳥が一羽、自信なさげに頭を傾げていた。
そう言えば、このオルゴールの曲は『カナリヤ』だ。きっとあまりに構ってやらないものだから、こやつも自分の鳴らし方を忘れてしまったに違いない。
確か、歌詞の終いに戻す方法があったはず。古い記憶を辿りつつ口ずさみ、どうにか歌の通りに支度を整えて、三日月笑う夜の海へ連れて行った。
波に浮かべたオルゴールは月光が引いた道を沖へと漕ぎ出し、小さな影が光に溶ける刹那、ピイと一声鳴いて空へ羽ばたいたのだった。
そうか、ずっと持ち主の所へ帰りたかったのだな。下手な口笛で見送りながら、胸の内の懐かしい面影に手を合わせた。
ファンタジー
公開:22/03/07 17:24
月の音色
月の文学館
テーマ:オルゴールと小鳥
オルゴール/自鳴琴
朗読採用いただきました。
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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