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 ぼくはずっと数字の6をいじめてきました。教科書の6という数を全部消したり、ノートに6と書きこまないようにした。テストではなかよしのふりをして、こっそりいじめるのが楽しかったからです。
 えんぴつで6という字をすこしずつ黒くぬりつぶすのは、ありや種をつぶすみたいで、小さなものに集中すると、ぼくはなんでも思い通りのことができるようになる。
 でも、そうしてたら6は死んじゃった。
 ぼくは6がどんな数か思い出せなくなりました。6、と書くことはできても、その6は死体だった。ぼくは6に変えて頭の中で3をふたつ使うようにした。
 ぼくが使ってる数とみんなの数は同じだから、6が死んだ時、みんなの6も死んじゃった。でもだれも知らない。5+1とか、8−2を使ってるのに気づいてない。ぼくだけがおぼえてる。そうじゃない6がいて、ぼくが殺してしまった。
 6のお墓はぼくだけが知ってる学校うらの石の下にあります。
その他
公開:22/03/09 18:00

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