オルゴールと小鳥

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僕がオルゴールの蓋を開けると、彼女の驚くような声が聞こえた。
「素敵」
手元のオルゴールからは、小鳥の鳴き声が聞こえている。
「気に入ってもらえたかな」
「ええ、とても」
「よかった。実はこれ、僕が作ったんだ」
「まあ」
「他にも虫や動物の声なんかもあるよ。音楽だけじゃなくて、いろんな生き物の声をオルゴールにできるんだ」
「素晴らしいわ」
やがて小鳥の鳴き声が止まると、僕は恥ずかしい気持ちを抑えて言った。
「僕、君のことが好きだ」
「え」
「それでその、僕とお付き合いしてほしい」
すると、しばらく間があったあと、彼女の声が聞こえた。
「うれしい」
「本当に?」
「ええ」
「それじゃあ」
「私もあなたのことがす」
そこで、彼女の言葉は途切れた。
僕は、そっとオルゴールの蓋を閉じた。
ふう、とため息をつく。
「彼女ほしいなぁ」
黙りこくったオルゴールを見つめて、これ売れないかな、とふと考えた。
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公開:22/03/08 18:49
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