占領厄者

昔は全国津々浦々旅する芸人ってのがいてね。旅芸人が訪れては人々は仕事の手を止め見に行ったものだ。
昔は今と違い娯楽に飢えていた。丁髷頭が腰に刀を差している時代だ。スマホはおろかテレビもラジオもない。旅芸人は持て囃された。
中でも占領厄者っていう変わった役者集団がいてね。
こいつらときたら厄災に見舞われている村や町を回っては厄を一手に引き受けてくれるんだ。
手には南天。それを以て『災い転じて福と成す』ってな。
だから自然と占領厄者には多くのおひねりが投げ込まれた。またここに来てくれと願いを込めるんだ。
大金を持った連中だったら盗賊に襲われやしないかって？
いやいや。盗賊も厄を引き受けたくはないからね。占領厄者は襲わなかったよ。
それも昔の話。今では占領厄者を襲う不埒な輩が出没する。そして知らず知らず厄を全部背負ってしまうのさ。
君、最近ついていないと言っていたね。こんなもので済むと思うなよ。