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始めは針で刺したような小さなものだった。ところが次の日には十円玉サイズになり、一週間後には野球ボールサイズになった。一カ月後にはサッカーボールサイズになり、三か月後には人が入れる程の穴に成長した。僕の部屋の壁に突然現れたその穴は一体何なのか。よく分からないままだ。毎日、部屋に開いた穴を眺めていると、不思議と心が落ち着いた。次第にこの穴は僕の心の拠り所になった。そしてこの穴は、僕の心に開いた穴なのだと気が付くまでには、随分と時間がかかった。穴は僕の虚無感、寂しさ、悲しさといった感情が増える度に大きくなっている。ならば僕がこのまま悲しい気持ちになったのなら、世界に大きな穴が開き、人類は絶滅してしまう。だから僕は、寂しい気持ちを押し殺し、明るく振る舞った。僕は人類を救ったのだ。いや、僕自身が救われたのか。あの穴は何だったのだろうか。今だに謎のままだ。またいつか穴が現れる事はあるのだろうか。
公開:22/07/21 09:33

富本アキユ( 日本 )

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