帰ってこない父の話

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父が帰ってこない。だが、家族は誰も何の反応もしない。「あっ、そう」の一言で終わる。
父がいなくなって母は「食費が一人分浮いた」だの「一部屋空いた」だの言って喜んでいる。給料が銀行に振り込まれているからか父の心配をしていない。
妹は加齢臭がしないと大喜び。
かくいう俺も同じだ。別に父と話す事なんてない。小遣いさえ貰えたらどうでもよかった。
そんな父と町ですれ違った。久しぶりの再会だ。
だからいつもは無視するのについ、俺から声をかけてしまった。
今まで何していたんだ?何で帰ってこないんだ?聞きたい事はいっぱいある。
「ああ、久しぶりだね。元気にしてたかい?」と他人行儀に話す父。一体どうしたっていうんだよ!?
「どうしたもこうしたも…僕はオヤジ狩りに遭って、親父である事を奪われたんだ。僕はもう、君の父親ではないよ。じゃあね」
去っていく父の背中は見慣れたものではなく、他人のものへと変わっていた。
公開:22/07/20 20:55

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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