強者

俺は昔から強かった。産まれながらの強者だった。
周りを暴力で押さえつけ、全て思うがままに振舞った。
人を殺し、裁判になった時でさえ金の力で無罪を勝ち取った。
強者は勝って当たり前だ。弱者は負けて当たり前だ。
俺はいつだって強い。負ける事なんて絶対にない。
だから不治の病に罹った時でさえ、俺は狼狽えなかった。
俺は部下百人の命を悪魔に与え、願いを叶えてもらう事にした。
病気を治してくれ？そんなケチな願いではない。
俺の望みはただ一つ。病気に負ける事のない体。不老不死の肉体だ！
悪魔はすぐに願いを叶えてくれた。
俺は病気に負けない、不老不死の肉体を手に入れた。
そんな俺は今も病床に臥せっている。病魔と戦っている。
俺は不老不死。死ぬ事のないこの肉体は今日も俺に勝つ事の出来ない病魔との戦いを強制しては、不治の病の痛みを与えてくる。