被認証者

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私は追われる身だ。都市のビル街を抜けて商店街へ、盛り場へ、歓楽街へ。人混みに紛れるのが一番だ。
私が逃亡を始めたのは彼らの認証を拒んだからだ。認証されても危険はない。誰もがそう思う。私もかつてはそうだった。認証された私のデータが一片の情報となるだけ。しかしあるとき私は首の後ろにタグを見つけた。見えないタグ。彼らは管理したり統制したりしない。ただ認証するだけ。危害はなく監禁もなくコントロールされるのでもない。でも私はタグが気になって仕方がなかった。そして首だけでなく耳にも腕にも胸にも見えないタグがあることに気づいた。
私は彼らの眼のなかで泳ぐことになる。私は逃げることにしたのだ。
しかし彼らは巧妙だ。私は場所を変え、姿を変える。日が暮れる。今夜は場末のホテル。小さなバスルームで気づいた。足の指の爪が青白く発光している。しまった。いつのまにか発光爪を付けられている。この発光体が追跡タグなのだ。
その他
公開:22/07/22 17:56

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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