催す(もよおす)

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出勤途中の電車内で腹痛を催した。気を紛らわそうと、窓の外の景色を追う。青空の下、過ぎていく町並、踏切や犬が吠える音が聞こえてくるような、駄目だ。一旦降りようか? でも時間が……

くっ、苦しい。ふと昔の「白蛇占い」を思い出す。占師の声質が急に険しくなり、ひと頻り語った後、エイっ! 元の甲高い声で言う。
「こんなん出ましたけど~」……
こんなふうにスッキリしたいものだ、と考えているうちに、腹痛は治まっていた。

しかし程なく第二波に襲われる。今度は、かなりヘビーだ。今この中で、俺程不幸な奴はいないだろう。神様、もしこれを乗り越えることができたなら……
脂汗を滴らせ、目を瞑って祈りながら、なんとか凌いで途中下車し、群衆を掻き分け、トイレへと猛ダッシュ。

ああ、なんてこった、トイレが使用中。早くしろ、クソったれ! え、なるほど。今、中の奴はクソをたれている。まさしく、クソったれだ。カタルシス!
その他
公開:22/07/17 21:15

痩せがえる

遅筆のため、週に一作できればと思っています。どうか、よろしくお願います。

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