なぜ鳴くの

カラスはなぜ鳴くのか。

我々研究員がこの命題を追求して5年の月日が経った。いまだに答えはでないどころか、進捗すら全く見られない。
年々研究費も減額されていき、もうなにかしら発見が見られないとこの研究も打ち止めになってしまう。今年こそはと私達は躍起になっていた。
まず、原点に戻って七つの子説の再確認や、志村けん教授の書いた論文を読み漁った。
どこかにヒントはないか。目を凝らして文献を読み耽る。ダメだ。既知の情報しかない。
次に実際カラスが鳴いている所を観察する。いつもの観察ポイントに向かい聞き耳を立てる。カラスの声は聞こえるが法則はわからない。双眼鏡でカラスの顔を見ても、表情すら掴めなかった。
私は自棄になってカラスに話しかけた。「なんで君達は鳴くのだ。」しかし、ちらりとこちらを見ただけで返事はなかった。

「アーホー」
悔しがる私を尻目に一羽のカラスが声をあげて山の方へ飛び去っていった。