レイコート

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ある日、村長が私用で出掛けようとすると雨が降ってきた。村役場にレインコートが置いてあったので、着ていくことにしたという。
村長が外に出ると雨脚は激しくなり、土砂降りの中、猛スピードで走ってきたトラックが村役場に向かって突っ込み、村長は不慮の死を遂げた。
現場に警察が駆けつけたとき、村長はレインコートを着ていなかったという。

この村の伝承に、天人の衣装である天の羽衣と同じ繊維でできた「レイコート」と呼ばれる代物がある。
古くは礼服ならぬ「霊服」とも言い、雨乞いの儀式で使われたそうだが、神事の絵を見ると透明なレインコートにそっくりだ。
霊感の強い人だとゾクゾクとした悪寒に襲われ、レイコートを着ていられないが、そのまま着ていると程なくして霊となり昇天するという。

雨が降りそうな日に天から不意に落ちてくるというレイコートが、なぜ村役場に置いてあったのか。その後のレイコートの行方も不明のままだ。
ホラー
公開:22/07/17 07:04
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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