メッセージボトル

今日は私の３０歳の誕生日。友人がとっておきだと言うワインをプレゼントしてくれた。
早速栓を抜き、味わってみる。最初、甘酸っぱさを感じたが次第に渋みが出てきた。正直、良いものとは思えないな。
「そりゃそうさ。これはメッセージボトル。中に込められているのは十年来の俺の気持ちだ。初恋から今日という日をずっと待っていたんだ。熟成された思いから苦みが出るのは当然だろ？」
ああ、そういう事。
そう言えば、３０歳になってもお互いまだ独り身だったらその時は結婚しよう、なんて話していたっけ。
グラスに残ったワインをぐっと飲み干す。友人の『好きだ！愛してる！結婚してくれ！』のメッセージが私の臓腑を満たし、温かくしてくれる。
そうだな。一人で飲む酒にも飽きてきたんだ。こうして私の晩酌に付き合ってくれる友人と結婚するのも悪くない。
私は数年前から思っていたその気持ちを込めたメッセージボトルを彼の為に今日、開けた。