待ちぼうけ1

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いつもこの公園のベンチには同じ男が座っていた。不思議と身なりは整っており、恰幅も良かった。私は横目で見ながらきっと、リストラを妻に告げることが出来ないからここで時間を潰しているんだろう。と勝手に想像していた。ただ、私が公園の前を通る時には早朝だろうと深夜だろうと男はベンチに座り、虚空を見つめていた。
そして、見る回数が増える事に自らが理不尽な妄想をしていただけであったと思ってきた。
そこで私は真実を知ろうと思いきって男に声をかけてみた。
「あの。」
「なんでしょうか。」
「すいません、貴方は何故このベンチに座り続けているのでしょうか?」
「あぁ、別になにかが起こるのを待っているだけですよ。」
「なにかが、ですか?」
「はい、実はお恥ずかしながら公園からなぜか出られなくなってしまいまして。」
私は予想外の回答に目を丸くした。
SF
公開:22/07/13 21:18

リマウチ

超ショートショート書いていきます

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