ゴキブリの恩返し

壁を走る一匹のゴキブリ。いつもならすぐに叩き殺すが、今日はちょっとした気の迷いで外に逃がしてやった。
するとその夜、そのゴキブリが恩返しにやって来た。
それがゴキブリの姿なら俺もすぐに叩き殺すなり追い返すなりしていたさ。だがゴキブリは人型で黒髪ロングの清楚系美少女。こうなると話は変わってくる。
むさい男の一人暮らし。生活に潤いがなくてウンザリしていた。
恩返しと言うのならこの家に住んで欲しい。君がその姿でウチに住んでくれるのなら、帰りを待ってくれる人がいるようで俺も生活に活気が出ると言うものだ。
「その程度でいいのなら」とゴキブリ女も了承してくれた。
こうして俺は美少女との夢のような二人暮らしを始める筈…だった。
忘れていた…こいつは見た目美少女でも中身はゴキブリだ。
女はベッドの下、冷蔵庫の裏、段ボールの中からこちらを見つめてくる。
隙間女のようなその姿は、夢は夢でも悪夢そのものだ…