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 大学の前期のゼミの最後の日に、教授が生徒に何かを配りはじめた。
「これは私が作った涙鉛筆です。この鉛筆を使って文字や絵を描くとそれを書いた人の脳と涙腺が刺激され、本心と同じ色の涙を流しはじめます。例えばやる気に満ちているときは赤、落ち込んでいると青い涙を流すというような仕組みになっています。皆さんにはこの鉛筆を使ってご家族や友達を観察して欲しいのです。それをレポートにまとめて、後期の初日の授業の日に提出してください」そう言って色の一覧表と共に鉛筆を渡された。
 期待と不安を胸に私はそれを持ち帰った。
「お母さん、新しい鉛筆の書き心地がとてもいいの。良かったら久しぶりに私の似顔絵を描いてよ」
 そう言って母に綺麗に削った鉛筆とノートを渡した。母は美大を出ているのだ。
「いいわよ。あなたを描くのは久しぶりね」
 母はノートに丁寧に絵を描き始めたが、途端に真っ黒な涙をぽたぽたと流しはじめた。
その他
公開:22/07/11 19:48
更新:22/07/11 19:51

ことのは もも。( 日本 関東 )

日本語が好き♡
18歳の頃から時々文章を書いています。
短い物語が好きです。
どれかひとつでも誰かの心に届きます様に☆
感想はいつでもお待ちしています!
宜しくお願い致します。

こちらでは2018年5月から書き始めて、2020年11月の時点で300作になりました。
これからもゆっくりですが、コツコツと書いていきたいと思います(*^^*)

2019年 プチコン新生活優秀賞受賞
2020年 DJ MARUKOME読めるカレー大賞特別賞受賞
2021年 ベルモニー縁コンテスト 入選

 

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