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今、トイレから出たら死ぬ。23時過ぎ、駅のトイレの個室で男は震えていた。秋の夜風が体に障ったわけではない。トイレの外に突然、次元を切り裂いたかのように現れた魔界に怯えているのだ。なんで…昼間はただの、ごく普通の穏やかな駅前広場だったのに。男はトイレのドアにもたれかかり俯く。そして、猫背になった男はふと思い出した。猫。トイレの外の異常な魔界でそういえば猫を見た。猫にしては背丈が大きく、二足歩行だった。多分、猫。気味が悪い猫。思い出したくなかった。しかし1つ思い出すと次々に出てくるもので、男はトイレの外の魔界で見た奇怪な者達をありったけ鮮明に思い出してしまった。魔女、ミイラ、吸血鬼、悪魔、キョンシー。男は独り震えた。23時55分、魔界の者達はまだトイレの外にいる。男は怯え、ただ手を合わせて祈った。そして5分程経つと外が急に静かになった。時計を見る。11月1日0時2分、男は急いでトイレから出た。
その他
公開:22/07/13 01:46
いたりかえです。空想と創造の毎日です。
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