魅力的な本

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いつも図書室で本を読んでいる女子。僕はその子の事が密かに好きだ。
女子は大きなハードカバーの本をいつも読んでいる。
「それ面白い?」
本から顔を上げた女子は真っ赤に充血したクマだらけの瞳を僕に向けた。
「ええ、眠るのも忘れるくらいに面白いわ。貴方も読んでみる?」
僕は本を借りた。
「ありがとう。その本、私を寝かせてくれなくて困っていたの。今夜はやっと眠れそうよ」
フラフラとした足取りで図書室を出て行く女子。
本を見ると、まるで舌なめずりをするように真っ赤な栞がチロリと顔を出していた。開けば噛みつかれてしまいそうだ。
僕は怖くなって本を図書室に置いて帰った。

翌日、朝早く図書室に行くと女の子が本を胸に抱き立っていた。
「ごめん…昨日、その本置いて帰っちゃったんだ…」
僕の言葉に女子は微笑む。
「うん。だから私、心配でこの本を取りに戻ってしまったの。私、この本が手元にないと眠れそうにないの」
ホラー
公開:22/07/08 20:20

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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