メスカブト虫の一日

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住宅街にポツンと残る雑木林。クヌギの根元からメスのカブト虫が顔を覗かせている。
夜明けと共に嵐は過ぎ去り、木漏れ陽が眩しい。
──アタシには大切な使命がある

甘酸っぱい匂いに誘われるまま、クヌギを登っていくと、樹液をめぐってクワガタ、カナブン、スズメバチなどが押し合い、圧し合っている。その中をズケズケと割り込んでいく。
──面の皮が厚いと影口を叩く輩もいるけど、何とでも、お言い

突然、何者かが背中に覆い被さる。オスが交尾を始めたのだが、お構いなしに樹液を貪る。そこへ別のオスが現れ、オス同士が角を突き合わせた。
──あんな角、こんな時にしか役立たない。邪魔なだけ

二匹をなおざりに、その場を離れる。地中を掘り進み、卵を産み付けた。
──この身も心も全ては、この時のため

その地上での人間同士の会話。
「来週から伐採開始しますね」
「ここも分譲され、来年の今頃は二十戸程、家が建つのですな」
その他
公開:22/07/10 21:18

痩せがえる

遅筆のため、週に一作できればと思っています。どうか、よろしくお願います。

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