揉み消しゴム

私が開発した揉み消しゴム。小さなミスを、余計な一言を、些細なすれ違いを揉み消し、過去をやり直す為の消しゴム。
例えば学生時分。テスト終了後に間違いに気付き、やり直したい！と思った事があるだろう。揉み消しゴムはそれを叶える為の道具でもある。
だが揉み消しゴムを手にした者はもっと大きなミスを揉み消そうとする。浮気、不祥事、いじめ、殺人…書き出すとキリがない。
だから私は揉み消しゴムの存在を揉み消す事にした。揉み消しゴムは人の為にならない。
私にとって揉み消しゴムは数ある開発品の一つに過ぎない。揉み消しゴムが消えたところで私にとって小さな事だ。
利用者にとって揉み消しゴムがなくなるのは大きな事であっても、揉み消しゴミを誰が作ったかなんて小さな事だろう。
だから私は私と言うちっぽけな存在に揉み消しゴムを使う。
私という存在が消えた以上、過去をやり直す道具を作るという過ちも消え去っただろう。