袋の鼠

「あれ、こんなところに絵があったんだ」
狛猫の石造の裏側に巾着袋のような絵が彫られていた。この神社では犬ではなく猫が鎮座している。その昔、この一帯で疫病が流行り多くの村人が亡くなった。ある日、足を怪我した一匹の白猫が神社の境内に横たわっていた。見つけた村人が助けてやり、元気になった白猫を放してやった。その後、疫病が収まった。村人は白猫の御加護と信じるようになり狛猫の石造を設置するようになった。

最近原因不明の病気が蔓延している。風邪のような症状が突如発生して、呼吸が苦しくなり、重篤な場合は亡くなってしまうこともある。鼠由来のウイルスが人に感染したとの研究報告もあるようだ。不要不急の外出は控えるように通達されていたが、部屋に閉じこもっているのも窮屈でマスクを着用して外出することにした。できるだけ人の少ない神社の境内を散策していた。
「あれ、この前見た絵と何か違うな？」
巾着袋が破れていた。