七夕バッテリー

ウグイス嬢に名前を呼ばれたと思ったら、僕はネクストバッターズサークルに立たされていた。大方夢であろう。高校生の時は野球部であったが、プロ野球選手になれた訳ではない。
ともかく、僕の打順が来たのだろうと思って打席に立つと、投手板には、淡い青色の漢服を身に纏った彦星がいた。驚きのあまり一球見逃してしまった。キャッチャーズボックスを見ると、織姫がいた。防具に身を包んでいるくせに、被帛をひらひらと浮かせているせいで織姫だと分かってしまう。二球目も見逃してしまった。
この状況が夢だと理解はしているが、折角ならば打ってやりたいと思い、しっかりとバットを構える。僕の心があの頃に戻ったような感覚を味わった次の瞬間、白球は遠い空に飛んで行った。

時計は午前五時を指している。僕はなんだか晴れやかな気分でいた。人生初のホームランだった。夢の中で、ではあるが。
カーテンの向こうで、流れ星がきらりと落ちた。