謝罪の大安売り

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我が社が販売している『謝罪』の売上が伸びている。特に鉄道関係者向けが著しい。数分でも遅延するとすぐに『謝罪』を使うからだ。車掌や駅員など、一度に大量の『謝罪』使う。すると鉄道利用者の怒りが一時的に落ち着く。

「社長。『謝罪』の売上が伸びているのはいいのですが、最近顧客から効果が薄くなってきたという苦情が少しずつ増えてきています」
「そうか」

「なにか手を打つ必要があります」
「もうしばらく、このままでいい」

「いいわけないじゃないですか」
「『謝罪』は見せ球だ。『謝罪』の効果が下がりきったタイミングで新商品を販売する」

「さすが社長。次の商品を考えていたんですね」
「そうだ。ちょっと高価だが必ず売れるだろう」

その新商品の名は『寛大な心』であった。

しかし数か月後、誤って『尊大な心』を販売してしまい、世の中がよりギスギスしてしまうことになるとは、このときの社長は知る由もない。
その他
公開:22/07/06 23:27

ひろいてん

面白そうなので参加してみました。

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