痴漢

「エロい尻をしているお前が悪い！俺は悪くない！」
満員電車で私に痴漢行為を働いた男が駅のホームで取り押さえられ、そう叫んだ。
周りの目が私に集中する。何人かは痴漢に同調するかのように私をいやらしい目で見てきた。
「お前の尻が俺の手を誘ったんだ！俺は悪くない！」
そう叫ぶ男の腕を見る。本来ならそこにあるべき手首が男には備わっていなかった。
では男の手はどこにあるかと言うと今も私の尻を追って地面を這いずり回っている。とても気持ち悪い。
だけどもっと気持ち悪いのは痴漢の口からいくつもの手首が零れ落ち、それが他の手首同様に私を追いかけて来る事だ。
中には男のものではない手首も混じっている。それは痴漢の手首に混じり、その場にいる者の財布を次々と盗んでいく。
そんな手首と、その手首の持ち主も取り押さえられた。
その持ち主の口から一対の手首が零れ落ちた。それは主の首を絞めると物言わぬ死体へと置換させた。