他人の声

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最初は俳優か歌手だった。ある整形外科医が開発した超小型音声変換素子を声帯に付ける手術で、美声を売りものにした。「芸能人は声が命」のPRにタレントたちはこぞって手術を受けて美声にした。医学は進歩して喉に小さなチップを埋めるだけで好みの声が可能になった。一般人も美声になれた。
声は十人十色、好みの声も様々かと思われたが、有名人の素敵な声が一般の中に広がった。声の著作権を主張するタレントもいたが、美声は万人のものと判断され、誰でも俳優の美声を自分の声とできた。流行の果てに人々が望ましいと思う声は収斂していった。また性差別反対の動きに男女の声は徐々に似てきて、ついに男女共通の一つの美声に落ちついた。今では男女とも大人はみんな同じ声である。
私も変声期が終わると美声チップを埋め込み標準の声になった。これで成人とみなされる。そしてチップが正常に作動するよう喉の医院に通う。調声ケアは誰もが受けている。
その他
公開:22/07/06 10:52

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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