退屈王

6
4

砂漠のなかの宮殿で王様に大臣が声をかける。
「王様、ご機嫌は如何?」
「ふむ、別に」
「南の国の果物と魚の料理は如何でした?」
「美味だ、ふむ」
「西の国から招聘した美女の舞踏団は?」
「ふむ、美女だ」
「昼餉のお時間です」
昼餐室で王様は王妃と二人。シェフが「蛸と黒豚の珍味です」
「美味だな、王妃」
「はい、王様」
昼寝から覚めるとディナー。
「一日退屈だ」
音楽や見せ物に王様はふむふむと関心は薄い。
ある日、遠国の旅芸人一座の舞台から蛙が飛び跳ねた。王様の目が輝いた。「何か?」
「雨の国の雨蛙です」
「その国に訪れたい」
王様の気持ちは固く雨の国への旅団が出発する。
「王様、よろしいですね」大臣が念を押す。
「さらば」旅団が出ていった。
大臣は王妃に言う。「王様は好奇心に勝てませんでした」
「それで?」
「王様候補の親族か次の王様をお選びください。退屈から決して覚めることのない王様を」
その他
公開:22/07/02 14:59

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容