雨女の館

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その館の上空はいつだって分厚い雲が蟠っている。その館はいつだって雨に打たれている。
陽の光が当たらない館に住むのは魔女でも吸血鬼でもない。雨女だ。彼女の居る所は必ず雨が降る。
そんな館に私は傘も差さずに訪れた。
ずぶ濡れの私を見て彼女は驚いた。そのままでは風邪を引いてしまうとお風呂を勧めてくれ、着替えも、食事も用意してくれた。至れり尽くせり。いくら感謝してもし足りない。
彼女は何も聞かない。いつまでも私が話し出すのを待ってくれた。
ぽつりぽつりと小雨のように話し出した私の口調は徐々に雨脚が強くなる。暴風雨のように荒れる感情を、豪雨のように流れる涙を止められない。
彼女はそれを受け止めてくれた。傘を打つ雨音のような相槌を打ちながら。
その日も私は泣き疲れて眠った。そんな私に彼女は寄り添ってくれる。
目を覚ますと私は自分の部屋に戻っていた。夢のような出来事だが私は月一で彼女に会いに行っている。
公開:22/07/01 21:23

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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