清水

あぁ、もうすぐだ。もうすぐで終わるんだ。
私は嬉しさのあまり涙がこぼれ落ちた。
こんなに報われた日があっただろうか。
私は昔から人が苦手でいじめも受けていた。社会人になっても上司からこっぴどい仕打ちを受け、苦しみが止むことはなかった。それもこれも今日で報われる。いままでがあったから今日これができるんだ。私は憎むべき相手にさえ感謝をした。
いま舞台の下では多くの人が私に注目し、次に何をするか、私の一挙手一投足を見逃すまいとまばたきせず凝視していた。
こんなに人に見られたことが今まであっただろうか。人目にはなれてないというのもあって足は震えていた。
さて、それじゃあみんなの期待に答えよう。
私は覚悟を決めると、清水の舞台から一歩飛び降りた。