ドーナツの好み

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映画を見るためにショッピングモールに出かけた。家族を誘ったが『一人で行ってきたら』とそっけない返事だった。エスカレーターで登っていると対面から降りてくる女性に目が留まった。
「まさか…」
彼女は10年前の婚約者だった。社会的立場の違いからか彼女の両親から猛反対され、結局彼女はどこかの御曹司と結婚して海外で暮らしているはずだった。気になった私は下りのエスカレーターに乗った。周りを見渡すと彼女はドーナツ店にいた。昔、彼女とよく通った店だ。彼女に近づき勇気を出して声をかけた。
「あの、覚えていますか?」
「…。どちら様でしょうか?」
「申し訳ございません。人違いでした」
「ふふふっ。あなたチョコのドーナツが好きだったわよね」
やはり、彼女だった。久しぶりの再会で映画を見るのを止め彼女とドーナツ店に入った。ちらっと左手を見ると指輪がなかった。
その様子をある男がオブジェの陰からずっと伺っている。
その他
公開:22/06/30 00:04

ひろいてん

面白そうなので参加してみました。

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