反抗期の息子

「俺は絶対に親父みたいにはならねぇ！」
息子はそう言って今夜も家を飛び出した。
すすり泣く妻。すまん…儂がもっとしっかりしておればこんな事には…
首を横に振る妻。「私の育て方が悪かったの…」と涙するが子育ての一番大切な時期に家を空けていた儂がどう考えても悪い。仕事とはいえ、数年間も家を空けていた儂にどう考えても非がある。
少しして、近所に住むやっさんがウチに駆け込んできた。
「お前んちの息子！またウチの馬盗んで走って行きやがったぞ！」
ああ…きっとあのバカ息子はまた悪い仲間に唆され、米騒動に手を貸しているのだろう…盗んだ馬で走り出す”元服の夜”という歌が流行し、息子もその虜だ。
儂が立派なお侍だったなら、息子をきちんと叱りつける事が出来ただろう…しかし今は見ての通りの落ち武者だ…もう髷は結えん…
息子はと言えば”りぃぜんと”とか言う西洋の髷の結い方を真似し、鎖国派の儂にずっと反対している。