4
2

記憶の中に囚われたまま、私はかすかな光を求めて手を伸ばす。

いつの日の頃からだろう。陽だまりの色は、私達の美しい透き通った町を照らす。

君を連れ出して町を出て、氷の結晶を洞窟の中に見に行った帰り、私達は町の方からの異変に気付いた。

――町が燃えている。

火事?
……いや、それにしては規模が違いすぎる。町全体が燃えている。

私は家族の安否を確かめる為に、慌てて戻ろうとした。しかし彼は、私の手を掴んだ。

「ダメだ。危険すぎる。あの炎の中に行くなんて無茶だ」

それでも私は――
私は彼の手を振り切り、炎に包まれる町の中へと入っていった。

そして自分の家が全焼しているのを目の当たりにして、その場に泣き崩れた。その時だった。焼けた家の屋根が、私に向かって真っすぐ落ちてきた。

「危ない!!」

そう言って彼が私を突き飛ばした。
そして彼は……

燃える屋根の下敷きになってしまった。
公開:22/06/23 08:31
更新:22/06/23 09:24

富本アキユ( 日本 )

カクヨムにも小説を投稿してます。
Twitterは@book_Akiyu

・SSG投稿作品1500作品突破

・作詞を担当
https://youtu.be/OtczLkK6-8c

・葉月のりこ様YouTubeチャンネル『ショートショート朗読ボックス』~ショートショートガーデンより~の動画内で江頭楓様より『睡眠旅人』を朗読して頂きました。

https://youtu.be/frouU2nCPYI

・魔法のiらんど大賞2021小説大賞。大人恋愛部門「彼女の作り方」が予選通過

〇サウンドノベルゲーム版作品(無料プレイ可)

ブラウン・シュガー
https://novelchan.novelsphere.jp/38739/

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容