糖類憐みの令

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(やっと、儂の時代が来た)
新右衛門は心の中で叫んだ。
佐藤新右衛門は第5代将軍糖山網吉に仕える筆頭老中である。
網吉を長年蝕み続けた糖尿病を食事療法で見事に克服し、健康体に蘇らせたのは新右衛門の功績である。
「新右衛門、其方のおかげですこぶる元気になった。庶民にも広めよ。」

しかし、新右衛門のあまりにも過激すぎる改革に不満を持つ庶民の間では黒玄米と称したイカ墨で塗られた白米、所謂闇米の流通が加速した。
追い打ちをかけるように将軍網吉は鷹狩で落馬して急死した。
網吉亡き後、将軍職を継いだのが長男網宣であった。
身長は2mを超える程の巨漢であった。
新将軍が新右衛門の前に姿を現した。
「新右衛門、其方の改革はしまいじゃ。すぐにやめよ。」
「新たな御触れを出す。其方の老中職もお役御免。」
こうして庶民の食卓には再び、大盛りの白米があがる事になった。

世に言う、「糖類憐みの令」である。
ファンタジー
公開:22/06/26 09:00

ひまわり広場( 神奈川県川崎市 )

産婦人科専門医/指導医
@sanadakuma
tama-himawari3w.com
身体は日々の食事で出来ている。
妊婦さんにも食事の重要性について情報提供しています。
ダイエット中の方々にも食事・睡眠・運動の重要性について情報発信しています。
自身が「愛着障害」であることに気付き、もう一人の自分と上手に共生しています。
自分が、自分の『安全基地』になることが生きていくための拠り所なのかもしれない。
科学的な視点からの表現も交えて、ショートショートストーリーを作っています。

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