ありの話

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「あ、間違えた」と僕は叫んだ。塩入れに砂糖を足してしまったのだ。
妻が「何をやっているの」と、呆れた口調で返す。「なんで事前に確認しないの」とブツブツとこぼす。
「文句ばかり言うな。こうすれば大丈夫だから」
僕は砂糖が混じった塩を皿に開けると、庭の目立つところに設置した。
「こうすれば砂糖と塩が分離できる」
「つまり、アリさんが砂糖を持ち去ってくれると」
「そういうこと」
「馬鹿じゃないの。そんな塩、使えるわけないじゃないの」
「使える使えないの問題ではなく、これは実験なんだ」
「バカもそこまでなると、たいがねい」妻は付き合いきれないという感じで、キッチンに戻っていた。
翌日、砂糖入りの塩は皿だけ残して綺麗になくなっていた。
「風で飛ばされたのよ」
妻はそういうが、ぼくは巨大なアリが庭に現れ、塩ごと舐めとったのではないかと思っている。
だれに笑われようと、想像することは自由なはずだから。
ファンタジー
公開:22/06/17 09:49

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