お父さん

私は産まれてすぐに病気で死んだ。そして、すぐに地獄に落ちた。
親より早く先に死んだ子は問答無用で地獄に送られるらしい。私は産まれてこの方、地獄での孤独な生活しか知らない。
ある日、そんな私に面会人が訪れた。父を名乗る男だ。聞けば男もまた、病気で早くに亡くなったらしい。
しかし生前にある程度の徳を積んでおり、今は天国に住んでいるのだとか…羨ましい話だ。
今は天国で仕事もせずに酒を飲んで暮らしているらしい。そうなんだ…
父は時間いっぱい天国での暮らしぶりを私に聞かせ、席を立った。
私も席を立つ。最悪な男だったな…
面会室を出ると父が待っていた。何で？天国に帰ったんじゃないの？
「子が仕事しているのに親は仕事もせずに酒ばかり飲んでいる。これは地獄行きなんじゃないかと閻魔様に聞いたら”その通りだ”と言われてね。父さんも地獄に落とされた。だから…一緒に暮らしてくれないか？」
私の父は最高の男だった。