花畑とマムシの革

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私の工房の裏には美しい花畑が広がっている。だがそこはマムシの住処でもある。
だから誰も足を踏み入れず花畑を遠巻きに見つめる中、私だけはマムシを見つめていた。
そのマムシの姿は何と美しいのだろう…
『儂に何か用でもあるのかの?』
マムシに声をかけられた。
驚くも私は感じたままをマムシに伝えた。
『そうか。儂は美しいか。貴様は人間にしては見込みがある。儂の皮をくれてやろう』
そう言ってマムシは私の目の前で脱皮し、美しい皮を譲ってくれた。
染師の私はすぐさま透明の皮に色を付ける。が、何故だ?何度染めてもあの美しさが出ない。
『ほぅ…上手いものだ』
マムシが皮を見て言った。
『あと一つ、こうしてやれば完成だ』
染めた皮にぽたりと毒を染みこませるマムシ。途端に皮は美しくなった!
多くの染め物に囲まれる中、その美は異彩を放っていた。
『美しさと危険さは紙一重。そして場に一つしかないからこそ美は映える』
公開:22/06/14 20:57

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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