アジサイダー

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故郷にある紫陽花が有名な古刹を久しぶりに訪れた。
美しい紫陽花を愛でて一休みしようと茶屋に立ち寄る。
メニューを見ると「季節限定、梅雨が旬の『アジサイダー』」という文字が飛び込んできた。すかさず注文することにした。
しばらくするとサイダーに似た炭酸飲料が運ばれてきた。
細長い透明のガラス瓶に入ったアジサイダーは、赤、青、紫ーー三色の層になっていて、シュワっと無数の泡が出ている。
ストローでアジアサイダーを一口吸うと古刹の紫陽花を眺める男女の姿が脳裏に駆け巡った。
見覚えがあると思ったら男性は若い頃の俺だ。女性は初めて付き合ったガールフレンドで初デートの懐かしい光景だった。
しとしとと降る雨の中、俺はうっかり傘を忘れてしまい、彼女の傘に一緒に入れてもらう。それがまるで相合い傘のようで照れくさいような嬉しいような記憶がよみがえってきた。
甘酸っぱい青春の思い出とともにアジサイダーを飲みほした。
青春
公開:22/06/11 07:15
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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