さとらせ

さとりを知っているか？心を読む妖怪だ。
さとられを知っているか？心の声が垂れ流しの妖怪だ。
さとらせはさすがに知らないだろう？心の声を聞かせる妖怪だ。
私はそのさとらせって奴でね。今は街の片隅に建つビルで警備員をしている。
このビルは何の変哲もないボロビルだ。進んで入ろうなんて誰も思っちゃいない。
実際、警備員の私をお飾りと思っている人も多いようだ。まあ、私がそう悟らせているだけなんだけどね。
そもそもここはビルですらない。警備員の私が、通行人に『ここは何の変哲もないビルだ』と悟らせているから皆そう思っているだけだ。
さとらせは日本各地にいて、こうした建物も意外と多い。
ん？ビルじゃなかったらそこは何だって？
それについては察してくれよ…さっきから私は貴方にずっと心の声を聞かせているんですよ。ずっと貴方にそれが何か悟らせているんですよ。
それでも悟れないって、さては貴方…察しが悪いですね。