万喋計

私の元勤め先は悪しき風習に満ちた職場だった。
仕事は足で稼げ！と万歩計を着けられ、１万歩歩くまで帰って来るな、と言われた。
都会ならまだしも車移動が当たり前の地方都市で何を考えているんだ？
相手を言葉で圧倒しろ！と万言葉計を着けられ、一万言吐くまで帰って来るな、と言われた。
万歩計はただただ振った。万言葉計は車移動中呻いた。ただただ苦痛でしかなかった。

私が新たに勤め先に選んだのは万言葉計メーカーだ。
万言葉計には大きな弱点があると示し、それを改善した万喋計の開発に携わった。
万喋計は言の数ではなく、単語の数をカウントする。さらにどんな単語が多いかも表示する。
その結果浮き彫りになったのはブラック企業の『死ね』の数と『申し訳ありません』の数。
虐めの証拠となる万喋計は下部社員の味方となった。
万喋計を使わない会社にはこう問いかける。

それはつまり、御社はブラック企業であると認める、と？