川風鈴

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 夏祭りが終わったこの時期になると、僕の住む小さな町では、小川に、何本もの『川風鈴』が渡されている。

 一本のロープに等間隔に吊り下げられた風鈴が並べられ、白磁にメダカやサワガニなど川の生き物たちが描かれている。

 僕はこの風鈴たちを勝手に『川風鈴』と呼んでいた。

 川上から風が吹くと『川風鈴』が順番に「チリンチリン」と涼やかな連弾を奏でている。

 その音色は、浴衣を着た若者たちを引き寄せ、小さな町を一時賑やかにした。

 でも僕は、ひぐらしの鳴き声が聞こえる夕暮れ時に、この演奏を聞いていると、人や虫以外にも、寄ってくるものが分かるんだ。

 試しに君も目を閉じて『川風鈴』の音色に心を鎮めてこらん。ほら、川上から、何かの行列が下ってくる光景が見えてこないかな?

 えっ、川の神さまの行列なんか見えないって? いつか君が、こっちの世界に来たとき、きっと見えるようになると思うよ。
ファンタジー
公開:22/06/08 08:20

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