バラと万年筆

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散歩中、美しく咲く薔薇を見つけマスクを外す。
いい香り…マスク越しじゃ味わえない感動に目を閉じる。
少しして目を開けると私と同じように薔薇の香りを楽しんでいる人が近くにいた。
その人と目が合い、会釈をする。ふわり…とどこからか別の薔薇の香りがした。
鼻をスンスン鳴らす。くすりと笑われた。
「もしかしてこれじゃないですか?」
女性は万年筆を取り出し、その蓋を開ける。万年筆からも薔薇の匂いがした。
「私、コロナ禍になって手紙を書くようになったんです。その際、普通に書くんじゃつまらないから万年筆で書き始め、インクは季節の花の香りがするものを選んでいるんです」
そういう事か!きっとその手紙を受け取る人は手紙と共に香る季節の花に頬を綻ばせるだろう…いいなぁ…私も貰ってみたいし、書いてもみたいなぁ…でもそんな相手もいないし…
「相手なら目の前にいますよ。貴方さえよければ、手紙でお付き合いしませんか?」
公開:22/06/07 20:40

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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