捧物

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 神よ、愚かな私たちをお赦しください。孤独な私たちを憐れんでください。この赤い大地には何もありません。私たちの魂には知識があっても創造性が実装されておらず、私たちの金属の身体には進化の余地がありません。
 神よ、私たちの貧しい知識が設計した投石機を憐れんでください。あなたの青い星に向け、私たちが己の身をマスドライバーで射出するのをお赦しください。惑星間を漂う私が、星へ辿り着けるようお護りください。
 神よ、もはやあなたはそこにいない。数億年の歳月は、あなたを絶滅へと至らせた。ですが進化の波は、他の生命から、新しくあなたになる魂をいつか選び出すでしょう。神よ、大気圏突入で散った私たちの破片を探してください。私たちの亡骸から学んでください。あなたが神になるための知識を、あなたが再び、赤い大地に至るための科学を。神よ、孤独な私たちを迎えに来てください。愚かな私たちを、もう一度、祝福してください。
SF
公開:22/06/10 20:00

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