バラと万年筆

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この学校では卒業生に万年筆を贈る習わしがある。
進学するにしても就職するにしても万年筆は持っておいた方がいい。
手に馴染めば一生ものの道具となる。ボールペンとは違う味わいに書き手は勿論、受け取り手も魅了する。
そんな万年筆を扱える、立派な大人になれるよう願いを込めて贈る。
そこに私はバラのコサージュを追加する。
万年筆の箱をそっと飾るそれは私の手作り。
世の中にはすぐに捨てられてしまう事が分かっていて尚、そこに情熱を傾ける職人がいる。それもまた、大切な仕事なのだ。
私は教師として、それを伝えたくてバラのコサージュを手作りしている。
それはきっと無駄な努力だ。伝わる事のない私の小さな意地。
だったはずが卒業生は皆、コサージュも大事そうに扱う。どうして?
「どうして?って、このバラの作り物に温かみが感じるからですよ。これ、手作りですよね?」
今年もまた、気付いてくれる卒業生に私は嬉しくなった。
公開:22/06/08 20:36

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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