バラと万年筆

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ドームの天井に設置された大きな蕾がゆっくりと開く。バラのように赤いそれは疑似太陽だ。
疑似太陽が時間通りに動いてくれるからこそ、私達は地下で暮らしていながら地上と変わらぬ感覚を得られている。もしあれがなければ私達はもうとっくに滅んでいただろう。
いやもういっその事、滅んでしまった方が良かったかもしれない。私達人間が生きている限り地球の汚染は続く。
大気が、大地が、大海が今では人間を受け入れない。地上に出たが最後、人間の体では汚染に耐えられず病んでしまう。
人類が地球に与えたダメージはまるで万年筆で書かれたように黒く、千年経った今も消えていない。
それでも地上に出たいと願うのは人の性だろうか。
人工太陽が与えてくれる柔らかな棘より、本物の太陽の刺す程に鋭い日差しが恋しい。
だから私は大地に緑を取り戻す為の土筆の研究を進める。
私は地球につくしていく。万年かかっても土筆で美しい地球を取り戻す。
SF
公開:22/06/06 20:37
土筆(つちふで・つくし)

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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