反対方向の川
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会社から出て、駅と反対方向に向かう。残業で遅くなった時だけ歩く道だ。コンビニで酒を買い、ベンチに腰掛ける。どぶ臭さと、ほんの僅かに磯臭さが漂う川を眺めながら、いつもここで酒を飲む。
この時間にしか訪れないので、川はいつ見ても闇で真っ黒だ。マンションの照明が川面に揺れている。何かが泳いでいる。あれは人魚だ。川にも人魚がいていいはずだ。
川の人魚は海の人魚ほど容姿に恵まれてない。奇声を上げながらペットボトルや空き缶を投げつけてくるので嫌われている。でもそれは昼の話で、夜はああやって静かに光と戯れている。
当然、出まかせだ。そこまで酔ってない。出まかせと現実を隔てる超えられないラインは酎ハイ一本では超えられない。別に構わない。ラインを越えるためではなく、遥か遠くにラインがあるのをこうやって、眺めるために来たのだ。
本当は川に向かって投げ捨てたい空き缶を、通勤鞄の隙間にそっと捩じ込んだ。
この時間にしか訪れないので、川はいつ見ても闇で真っ黒だ。マンションの照明が川面に揺れている。何かが泳いでいる。あれは人魚だ。川にも人魚がいていいはずだ。
川の人魚は海の人魚ほど容姿に恵まれてない。奇声を上げながらペットボトルや空き缶を投げつけてくるので嫌われている。でもそれは昼の話で、夜はああやって静かに光と戯れている。
当然、出まかせだ。そこまで酔ってない。出まかせと現実を隔てる超えられないラインは酎ハイ一本では超えられない。別に構わない。ラインを越えるためではなく、遥か遠くにラインがあるのをこうやって、眺めるために来たのだ。
本当は川に向かって投げ捨てたい空き缶を、通勤鞄の隙間にそっと捩じ込んだ。
その他
公開:22/06/06 20:00
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