三十年のヒカリ

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町外れの高台に聳え立つ、古い団地群に住む私は、夜の帳の向こうへと続く丘を眺め遣る。
ポツン、ポツンと明かりが灯る中、一つの光が音もなく流れていく。あの丘の坂道を一台の車が走っているのだ。姿を隠しては、また現れるあの光に、私の想いは吸い込まれていく……

「免許取りたてで、いきなりこんなとこ走るか? しかもこんな時間帯に」
「仕方ねーだろ、道に迷ったんだから。おっと、またトンネルだわ」

16ビートの重低音に掻き消されまいと、二人の声は自ずと荒い。後部座席で窓に凭れていると、トンネルを抜け、暗闇の向こうに団地群が見えてきた。なぜか一部屋の明かりに惹かれ、凝視する。失恋して塞ぎ込む姿を見るに見兼ねて、誘ってくれたドライブ……

光がまた現れた。三十年前のあの日、あの丘を走る光を、ここで見ていた人がいたかもしれない。
そして三十年後、あの光の中の誰かが、こんなふうに丘を見つめるのかもしれない……
青春
公開:22/06/05 21:01

痩せがえる

遅筆のため、週に一作できればと思っています。どうか、よろしくお願います。

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