バラと万年筆

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私の母はいつだってシャンとしている。背筋をしっかり伸ばした和服の似合う女性。私は母のだらしのないところを見た事がない。
古風な人だったと思う。料理が得意で毎日沢山の料理を作ってくれた。
「宿題を終わらせないと御飯抜きですよ」
その一言はまさに死の宣告。母のご飯は出来立てが一番美味しいのだ。だから私は夕食までに何がなんでも宿題は終わらせていたし、勉学にも励んでいた。
そんな私もついに結婚する。母から一通りの料理は教えてもらったものの、まだあの味には程遠い…
特に母の得意料理である豚バラ大根なんて作り方すら分からない。
だから私は母に頼み込みレシピを書いてもらった。
さすが母のレシピ。万年筆で書かれた作り方はまるで手紙のよう。私の心を掴むべく、美しい文字がきっちりと並んでいる。
しかし、肝心の分量が全て適当だ!一摘みってどれくらい?一息って何?
母のだらしなさを意外なところで見つけてしまった…
公開:22/06/05 20:39

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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