バラと万年筆

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万年筆を空に向け集中する。
これだ!と思い、降ってきた雪の結晶に向けペン先を動かす。すぐに手紙を書き始める。
私は今、雪女さんへの手紙を書いている。
彼女は怪談の花形スター。普通に手紙を書いても読んでもらえるかどうか分からない。
ファンの中にはその冷たい雰囲気から、手紙なんて読まずに全部凍らせているんじゃないか?と囁く者もいる。そうでないと願いたい。
雪女さんはまるでバラだ。美しいが迂闊に触れれば冷たさという鋭い棘が手のひらを痛めつける。
でも、誰にも触れてもらえないなんて寂しいじゃないか…そんなの冷たさが増すだけじゃないか。
だから私は手紙を書く。体には触れられなくても心には触れられる。
雪の結晶から貰った白インクは唯一無二の形をしている。唯一無二の手紙で雪女さんの心を温めてあげたい。

後日、雪女さんからお返事を貰った。
氷の万年筆で書かれた手紙の文字は美しいが内容的にはスベっていた。
ファンタジー
公開:22/06/01 20:14

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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