ヴィシュヌ神の夢

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仏陀は天上界でブラフマー神に語った。
「私が死んでから56億7千万年後に、太陽が赤色巨星となって地球を飲み込んでしまいました。まさか、弥勒菩薩による救済がこのような形になるとは」
ブラフマー神は静かに答えた。
「おかげで地上の生命はこれ以上苦しむことも無くなったではないか」
天上界の仏たちはいつもこのように淡々と言い放つ。苦笑いしながら、仏陀は続けた。
「そしてもうすぐ宇宙も終わるのですね」
「そうだ。ヴィシュヌ神の1日が終わる頃だからな」

ヴィシュヌ神の脳細胞はスピンネットワークと呼ばれていた。宇宙の時間も空間もそこから二次的に生まれていた。あたかも、脳細胞自体に意識はないが、それが接続されネットワークを組むことによって二次的に意識が生まれるように。

仏陀は来世では平凡な人間として生きたいと思った。ヴィシュヌ神の枕元に芳しき蓮の花を置いておこう。願わくば、200億年の良き夢を。
SF
公開:22/06/01 17:01

ドクターK( 東京 )

東京大学を卒業。現在は教育職。酒と美食とサッカーを愛する。年齢不詳。

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