バラと万年筆

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妹の部屋に入ると甘い苺の香りが鼻を突いた。
窓際を見る。恋人が出来ると一時期話題になったワイルドストロベリーが置かれていた。
妹は手紙を書いている。誰に?なんて聞くまでもない。彼氏にだろう。
SNSの発展が目覚ましい今なお妹とその彼氏はこうやって手紙でやりとりをしている。それもお互い万年筆で手紙を書いている。何が楽しくてそんな手間のかかる事をやるんだか…
「お姉ちゃんは何も分かっていないね。植物を育てるのも、愛を育むのも、手紙を書くのも同じ。じっくりじっくり時間と真心を込めるものなんだよ」
そんな面倒臭い事、私には到底できないな。
面倒臭いと言えば妹が今インクに使っているワイルドストロベリーのジャムもそうだ。苦労して作ったのにそれを食べずにインクとして使うなんてもったいない…
「万年筆はね、上手く使えば一万年使えるの。私、甘いこの愛を一万年続けるつもりよ」
妹は苺の花のように小さく笑った。
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公開:22/05/31 20:11

幸運な野良猫

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元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
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