サンジョルディの万年筆
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親しい人に本とバラの花を贈る、サンジョルディの日という記念日がある。
普段は花より団子の彼女だけれど、たまには目先が変わって良いだろう。旅先の本市で見つけた万年筆を一本、郵便受けへ入れておいた。
匂い立つ様な深紅の軸は、サンジョルディの日の元となった、伝説の聖ゲオルギウスが退治した、ドラゴンの血から生まれたバラの木から削り出したもので、インクにもそのドラゴンの血が使われており、とにかく世界に二つとない逸品だそうだ。
この変てこに長ったらしい売り文句が既にうさん臭いが、ファンタジー好きの彼女なら面白がってくれる気がした。
一年後の同じ日、我が家の郵便受けに本が一冊差し込んであった。
『バラと万年筆』と題された表紙に吹き出しつつ、今度は本物を贈るべく花屋へ走る。
表紙裏の著者近影で笑う彼女の手に、見覚えある深紅の万年筆。
バラのつぼみがほころぶ様に、彼女の才能もみごと花開いたわけだ。
普段は花より団子の彼女だけれど、たまには目先が変わって良いだろう。旅先の本市で見つけた万年筆を一本、郵便受けへ入れておいた。
匂い立つ様な深紅の軸は、サンジョルディの日の元となった、伝説の聖ゲオルギウスが退治した、ドラゴンの血から生まれたバラの木から削り出したもので、インクにもそのドラゴンの血が使われており、とにかく世界に二つとない逸品だそうだ。
この変てこに長ったらしい売り文句が既にうさん臭いが、ファンタジー好きの彼女なら面白がってくれる気がした。
一年後の同じ日、我が家の郵便受けに本が一冊差し込んであった。
『バラと万年筆』と題された表紙に吹き出しつつ、今度は本物を贈るべく花屋へ走る。
表紙裏の著者近影で笑う彼女の手に、見覚えある深紅の万年筆。
バラのつぼみがほころぶ様に、彼女の才能もみごと花開いたわけだ。
その他
公開:22/05/30 17:21
月の音色
月の文学館
テーマ:バラと万年筆
朗読採用いただきました!
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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